ダイオキシン

公開日 2019年07月11日

ダイオキシン類とは

ダイオキシン類の構造図二つのベンゼン環を有する有機塩素化合物で、水に溶けにくく油分に溶けやすく、化学的に安定した物質で、発がん性や生殖機能の異常を引き起こすなどの毒性が指摘されています。
また、自然分解されにくいため環境への残留性が高く、生物濃縮されやすい性質を持ちます。

「ダイオキシン類」とは、以下の物資の総称です。

ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)
ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)
コプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)

これら(PCDD、PCDF、コプラナーPCB)は1つの物質名ではなく、それぞれよく似た物質のグループの名前です。
個々の物質は、塩素の数や付く位置で性質が異なり、これらを異性体と言います。
異性体の数は全部合わせて200種類を超えます。
ダイオキシン類の中で、PCDDとPCDFは2個のベンゼン環が酸素を介して結合した平面構造をしており、さらにベンゼン環に結合している水素の一部が塩素に置換しています。
一方、PCBは、2個のベンゼン環同士が結合し、同様に水素の一部が塩素に置換しています。
このうち、コプラナーPCBは、比較的平面構造を取りやすい形をしており、PCDDと似た性質があります。

ダイオキシン類の発生

工場煙突ダイオキシン類は、炭素・酸素・水素・塩素を含む物質が熱せられることで生成します。
つまり、原材料の1つである酸素は空気中に豊富にありますから、有機物(炭素・水素)と塩分(塩素)を加熱・燃焼させればダイオキシン類が発生する可能性があります。
これらは、分析のための試薬などを除き、意図的に作られるものではなく、副産物として生成します。
人間活動による主な発生源としては、廃棄物の焼却や製鉄業などがあげられ、身近なものとしては、自動車の排気ガスやタバコの煙などにも含まれています。
また、火山活動や山火事などの自然現象でも発生していることが分かっており、もともと自然界に存在したものが人間活動に伴って増加し、分析技術の発展により発見されたものと考えられます。
過去には、PCDDが不純物として含まれていた除草剤が使用されていましたが、現在では使われていません。
また、カネミ油症事件で毒性が問題となったPCBは、絶縁油や感圧紙として広く使用されていましたが、1972年に製造と使用が禁止されています。

環境中のダイオキシン類

環境への排出量は、平成22年で160g-TEQ/年(異性体ごとの毒性を勘案した指標)と推計されていますが、この値は平成12年の7%以下となっており、この間、年々減少してきています。
一方、環境中のダイオキシン類濃度は、同じ10年間で見てみると、
大気で21%、水質で61%、底質で72%、土壌で43%となっており、低下はしているものの排出量ほどの減少は見られません。

ダイオキシン類の人への影響

ダイオキシン類は、「史上最強の毒物」などと言われますが、実はよく分かっていません。

一般的に、未知の化学物質について毒性を調べる場合は、何種類かの動物実験を行い、その結果から類推することが多いのですが、ダイオキシン類の場合は動物の種類による差が大きく、モルモットではLD50(半数致死量)は0.6μg/kg、ハムスターでは5000μg/kgと1万倍近くの差があります。
人間の場合は、過去の事故での結果観察などから、急性毒性についてはモルモットほどの感受性は無いのではないかと考えられていますが、慢性毒性や発がん性、催奇形性なども合わせて、正確なことは分かっていません。

ダイオキシン類の摂取

環境中に存在するダイオキシン類は、食事や呼吸によって体内に取り込まれます。
ダイオキシン類に限らず、環境中には様々な有害物質が存在し、そのいくらかは、日々体内に取り込まれています。
しかし、極端に量の多い場合を除き、人体の防衛機能はこれらを難なく処理しています。
こうした環境中の微量物質の慢性的な影響を評価する場合、一日摂取量(一般的な人の1日の摂取量)が耐容一日摂取量*(体にとって問題のない摂取量)より多いか少ないかを見ることがあります。

ダイオキシン類の場合、耐容一日摂取量は安全率を見込んで4pg- TEQ/kgとされていますが、平成21年度の調査では一日摂取量は0.85pg-TEQ/kgと推定されており、現状の摂取量は十分低い値となっています。
なお、この一日摂取量は、環境中の濃度低下にともなって、年々減少しています。

ところで、体に取り込まれるダイオキシン類はどういった由来のものが多いのでしょうか。

平成21年度の調査では、食物由来が98%程度、大気、土壌、その他由来が2%程度であり、ほとんどが食物由来となっています。
ダイオキシン類は脂溶性が高く難分解性であるため、生物濃縮が見られます。
そのため、食物連鎖の上位捕食者である魚介類からの摂取が多く、90%以上を占めています。
また、肉や卵、乳製品からの摂取も6%程度となっています。

すでに述べたように、一日摂取量は基準となる耐容一日摂取量の五分の一程度であり、極端な食生活をしなければダイオキシン類の量を心配する必要はありません。
健康のためには、多くの種類の食品をバランスよく食べることが大切です。

*耐容一日摂取量(TDI):

生涯にわたり摂取し続けても健康に影響が現れないと判断される体重1kgあたりの1日の摂取量。
ダイオキシン類の場合、動物実験の結果から得られたデータをさらに10分の1にして、4pg-TEQ/kgと定めています。

pg(ピコグラム)=1/1012グラム(1兆分の1グラム)

TEQ (Toxic Equivalent)
ダイオキシン類の毒性の強さを表すのに使われるもので、「2,3,7,8-TeCDD毒性等量(TEQ)」と呼ばれます。
ダイオキシン類は多くの異性体があり、それぞれ毒性が異なります。
そこで、毒性の強さを比較するために、最も毒性が強いとされる2,3,7,8-TeCDDの毒性の強さに換算した毒性等量(TEQ)が用いられます。

ダイオキシン類による健康被害事件

■ベトナム戦争における枯葉剤

ベトナム戦争でアメリカ軍は枯葉作戦を行いました。この作戦により、除草剤(2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸や2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)が大量に空中散布されました。
これらの除草剤には不純物として、大量のダイオキシン類が含まれており、これが原因とみられる奇形が多発しました。
ベトナム戦争中の10年間に使用された枯葉剤に含まれていた2,3,7,8-TeCDDの量は167kg(モルモットの半数致死量が0.6μg/kg体重といわれている)になるといわれています。
米軍でもこの作戦に従事した人々にも様々な障害が現れており、ベトナム戦争が終結後40年以上経った今でも、この問題を引きずっています。
1988年に来日したべトちゃん・ドクちゃんも、この枯葉剤による影響を受けたものです。

■カネミ油症事件

1968年、福岡、長崎を中心に、カネミ倉庫が製造した食用油にダイオキシン類であるPCDF及びコプラナーPCBが混入しており、それを利用した料理を長期間食べ続けたため、中毒症状が起きました。
患者の数は1850名もの多数になり、摂取した人々には、肌の異常、頭痛、肝機能障害などの症状が見られました。
また、妊娠中に油を摂取した患者からは、皮膚に色素が沈着した状態の赤ちゃんが生まれ、「黒い赤ちゃん」として報道されました。
50年近く経過する今でも患者の苦しみは続いています。

ダイオキシン類に対する取り組み

健康被害の恐れがあるダイオキシン類は、その排出を抑制し、環境中の濃度を低減する必要があります。
高知県では、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、各種対策を進めています。
ダイオキシン類濃度の常時監視結果などの情報は、次の高知県環境対策課のホームページで公表されていますのでご覧ください。
ダイオキシン類の公表ページへ
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/030000/030801/dioxin-kouhyou.html

この記事に関するお問い合わせ

高知県 健康政策部 衛生環境研究所

所在地: 〒780-0850 高知市丸ノ内2丁目4番1号 保健衛生総合庁舎
電話: 総務担当 088-821-4960
企画担当 088-821-4961
保健科学課 088-821-4963
生活科学課 088-821-4964
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