大豊町での県政報告会知事挨拶

公開日 2007年12月06日

更新日 2014年03月16日

大豊町での県政報告会知事挨拶

平成13年4月8日

 皆さん、こんにちは。本日は、お聞きをしますと、色んな行事がある日だということでございます。更に、ちょうど、もう5時過ぎのおくつろぎの時間帯でございますので、大変申し訳ないと思いましたけれども、こうした場を設け、こんなに大勢の方にご参加をいただきまして、本当にありがたく思っています。
 で、今日、急にお集まりをいただきましたのは、先ほど小笠原さんからもご説明がありましたように、新聞やテレビなどで皆様方もご承知だと思います。県が行った融資に関する色んな問題、それについての自分の感じ方、思い、また、これから県としてどうしていこうと思ってるか、そんなことをご説明をして、皆様方のご意見をお聞きしたい、と思ったのがまず第一の目的でございました。
 ただ今、町長さんからも国道の439号線の橋柱の改修、また県道の改修についてご要望をいただきましたし、併せて、間伐、水源税のことについてちょっと触れていただきましたので、その「水源税」のことについてちょっと頭にご説明をして、後、その本題の方に入らせていただきたいと思います。

 皆さんもご承知かと思いますが、去年「地方分権一括法」といって、地方でも色んなことが独自にできるという法律の改正がありました。その中で、地方で独自の税金を作ることができる、という項目がございます。で、高知県でも、どんな新しい税金が考えられるかな、ということを色々研究をいたしました。けれども、そもそも地方分権だから、といって税金ばかり増えたのでは、町民の皆さん方からも地方分権って一体なんだろう、というようなご意見になってしまうだろうと思いますから、みんなが納得して納められるような税金でなくてはならない、ということを思いました。
 そういう中で最後に候補者として残ってきたものが、この「水源税」というものでございます。といいますのも、高知県は、ご承知かと思いますが84%が森林、全国で一番森林の多い県でございますから、この森林を保全する、守っていくために、みんなで広く薄く、負担をしていくということには多くの県民の皆さんのご理解も得られるのではないかと、こう思いました。
 ただ、実際にはどういうような形で税金を納めていただくのか、また、それをどうやって使っていくのか、総論では賛成でも、各論になると色んなご意見がたぶん出てくるだろうと思います。ということで、これから1年ほどをかけて議論をして、来年度、14年度中に何らかの方向をきちんと出していく、そんなスケジュールで議論を進めようとしています。

 今、町長さんからもお話がございましたように、例えば、水道を使っている下流の大都市部の方々からお金をいただいて、上流の森林の保全に当てていくというのもひとつのやり方でございますし、また、県内全体、例えば、1戸辺り1,000円ぐらいずついただく。県内には30万余りのご家庭がございますので、1つのご家庭あたり年間2,000円ぐらいいただくという、広く薄く全員で負担をしていくというようなやり方もあります。で、様々なやり方をこれから検討をしていきたいと思いますけれども、いずれにしても、今申し上げたような「広く薄く」という手法でも、2億とか3億というお金でございますので、県で行っております毎年の造林のための事業が12億ありますから、これに比べれば金額的には少ないということになります。
 となりますと、2億とか3億というお金ならば、何とか政治力で頑張って国から補助金をもらってくれば良いんじゃないのと、こういう考え方の方も出てくると思います。けれども、国からただもらってくるお金と、皆さん方に広く薄く、または下流で水道を使う方から広く薄くこれもご負担をいただくというものでは、税を使う私達の思い、また納めてくださる皆さん方の思いも、たぶん大きく違うのではないかと思います。
 というのは、これまで税金というのは、自分で納めてもどこでどう使われてるかなかなか分からない、ということへの不満が多くございました。特に、大都市部の人が、今、こうした中山間地域での色んな事業に対して、地方の人口も少ない所で色んな公共事業をやっても無駄じゃないか、というような批判を数多くしておられます。で、これも自分の納めた税金がどこでどう使われているかなかなか分かりにくいという、その苛立ちが不満の1つの原因ではないかと思います。

 これに対して、今申し上げたように、高知の県内で広く薄く負担をしていただく。そうして森林の保全に当てていくということは、納めるお金は少額であっても、皆さん方が自分が納めたお金が、ここでこういう形で使われてるんだな、ということを見ることができる。手応えを感じることのできる税金になるのではないかと。それによって、税というものへの考え方もまた変えていただけるのではないか、そして、先ほども言いましたように、使わしていただく私達役所の側も、その税の重みというのをもう一度感じるようになるのではないか、と思っています。
 更に、そうやって納めてくださった方々が、年間例えば1,000円なら1,000円納めるというだけではなくて、せっかく納めたものがどうなってるんだろうと言って、その早明浦なら早明浦の水源地などへ行って見てみるというようになれば、まあしめたもので、そこで上流と下流との本当の意味での交流、心のつながりも出てくるのではないか、また、みんなで森林というものを大切なものと考えて、それを保全をしていこう、というような意識が芽生えてくるのではないか、そういう森林保全という、これからの時代どうしても必要な、水と空気とを循環させるために必要な、そのことをみんなで支えていきましょう、という気持ちを起こしてもらう、その1つの取っかかりとして「水源税」というものが考えられないかな、ということを思っています。
 つまり、そこで新しい税金をかけて、税収を、税額を増やすということよりも、そのことによってみんなの意識を切り替えていきたいというのが、水源税の主なねらいでございます。
 しかも、高知県の80万人余りの人口の中だけで税金をいただいて森林の保全に使うということだけではなくて、これがやがて四国全体に広がって、四国4県で、みんなで出し合って早明浦なり何なり、水源地の森林の保全をしていこう、ということになれば、みんなの意識ももっともっと大きく変わりますし、そのことが全国に訴えかけるアピールの効果というのも大変大きなものになると思います。そして、それが5年先か10年先か分かりませんけれども、更に全国的な動きになれば、先ほど町長さんの言われた「森林交付税」だとか、県が考えた森林を保全していくための新しい起債、借金をして仕事をしていくような制度、こういうものに代わるような、何か新しい流れが国の方に興していけるのではないか。勿論、森林交付税やなんかの要望をこれからも続けていくことも大切でございます。が、一方で具体的にできることからやることによって国を動かしていく、その1つのきっかけになるのではないか、そんな思いで、この水源税にもこれから取り組んでいきたいと思いますので、是非、皆様方にもこのことに関心を持っていただければな、ということを思いました。

 ということで、今日お集まりをいただいた本題の方に移らしていただきたいと思いますけれども、皆様方も新聞やテレビで県が行った融資に関する様々な問題をお知りになって、一体これはどうなってるだろう、県は大丈夫だろうか、というふうにご心配をいただいてるのではないか、と思っています。
 実際に県議会の百条委員会の調査特別委員会でも調査が進められ、その中で県の元の幹部職員が次々と告発を受けましたし、警察・検察での捜査も進んで、先日は県庁や幹部職員の自宅などが家宅捜索を受けるという事態になりました。
 私も早いうちにこういう機会を設けてご説明をしたいということを思ってましたし、実際、昨年の春、この問題が明るみに出ましたときにすぐこの問題を調査をする、県庁の中できちんと調査をして、皆様方にご説明をするための委員会をつくろうということを思って、そのことを県議会でも申し上げました。
 けれども、その直後に、今申し上げた県議会の調査特別委員会というものができて、次々と関係者が証人として呼ばれるということになりましたので、そういうときに、私がまた関係をした職員1人1人に会って話を聞いていきますと、何か口裏合わせをしてるのではないか、というような疑いの目でも見られかねません。更にその後、警察などの捜査も進んで参りましたので、そこでまた関係者と色んな意見交換をしていきますと、かえって調査や捜査のお邪魔をするのではないかと思って、そのようなことは差し控えてきました。
 けれども、もう既に多くの幹部職員などが告発を受け、また県庁が家宅捜索を受けるという事態になりましたし、更に捜査が進展をしていくことも想像できる状況になって参りましたので、今の時点で私としてこの事件をどう受け止め、またこの事件に対してどう対応していこうとしているかということを、是非、皆様方にも聞いていただき、またご意見もいただきたいと思って今日この場を設けさしていただきました。

 まずは、その事実経過からお話をしたいと思いますが、問題になっております県の融資というのは、2つの全く別の出来事がございます。1つは「モード・アバンセ」という、先ほど小笠原さんからご説明のあった、縫製工場に対する融資でございます。
 この「モード・アバンセ」というのは、県内に5つございました縫製工場が一緒になって、そして協業組合という新しい会社を作り、それによって、従来の賃加工だけではなくて、少し付加価値の高いような縫製の仕事をしていきましょう、こういう考え方で始まった事業でございました。それぞれの工場の中には同和地区の工場があり、また同和地区の方々も就労をしておられましたので、そうした同和対策としての就労対策の一環として、地域改善対策事業いわゆる同和対策事業に位置づけられて、高度化資金という、国と県が一緒になって貸し付けていく、その資金を融資をして始まった工場でございます。
 工場が始まりましたのは、平成8年の7月のことでございますが、この工場がスタートしてすぐに経営者の方が、いきなり「運転資金が無くなってしまって、もうこのままではなかなか事業が続けられないかもしれない。だから、お金を貸して欲しい」ということを県に申し入れてこられました。
 今の時点で振り返ってみますと、そもそもこの経営者の方には、金を騙し取る、というところまであったかどうかは分かりませんけれども、うまくやって県からお金を引き出そう、という思いがあったのではないかと思いますし、そうした趣旨のことを県も警察に対して上申書で申し上げております。また、結果としてこの経営者はもう既に詐欺の疑いで逮捕をされております。けれども、元々県の行政というのは、弱い立場の方、困った会社の方々をお助けをする、というようなことを前提に仕事をしておりましたので、なかなかそうした問題点を見破ることができなかったということが1つ言えると思います。

 また、後ほど問題点の中でもお話をいたしますけれども、そもそも5つあった工場がそれぞれに色んな借金を抱えておりました。ですから、診断をしていきましたときに、「その借金は新しく作る会社には引き継いではいけませんよ。新しい会社に借金が引き継がれたのでは、もうすぐ運転資金も無くなってしまったり、問題が起きるからそういうことはしてはいけませんよ」ということを条件にしておりました。けれども、この診断をする場所と、そして融資をする場所が、県の商工労働部の中でも担当が違っておりまして、その職員の間で十分な情報の伝達が、意思の疎通がなされていなかったというようなことから、今申し上げたような情報がきちんと伝わっていませんでした。こういうことが大変大きな過失、ミスの1つでございます。
 その結果、その会社から「お金を貸して欲しい」という要望を受けた県の側としては、1つは同和対策事業という、県にとって重要な事業の一環であるということ。また、現実にその場には、当時は400人ほどの雇用がございました。働く方がおられました。県内で300人を越えるような事業所というのは数えるほどしかございませんので、そういう意味で就労を守るということも必要だ。更に、先ほど申し上げました高度化事業ということで、かなりのお金を貸し付けた後で、いきなりそれが倒産をしたのでは、様々な問題が起きる、というようなことを一定判断をして、お金を更に県単独で貸し付けるということをいたしました。これが事実経過でございます。
 それに対して、県議会の調査特別委員会では、そもそも相手側が騙そうとしてこの融資を求めてきたのではないか、また、県の側も、その相手側にどれだけの担保があるかということも十分調べず、また、経営の状況がどうかということも十分把握をせずに、または、把握をしてやや危ないと分かっていたにもかかわらず大変大きな金額のお金を貸した。このことは相手側は詐欺で、また貸した側は背任にあたるのではないか、ということで告発を受けているという事件でございます。

 で、もう1つの「闘犬センター」という、高知市の桂浜にある会社に絡む融資は、全く別の事件でございます。が、たまたま同じ時期、平成8年の後半に、この闘犬センターも他の会社の不渡りの手形を掴んで資金繰りが苦しくなりました。このために県に対して、直接お金を貸してもらえないかというお話を持ってこられました。
 その時、窓口になった部長さんが、担当の部長さんと一緒に銀行に行って、後で県として何らかの対策を講じようと思っているので、銀行からお金を貸してもらえませんかと、こういう念書・覚書を書いたというのが、この事件の粗筋でございます。
 この念書・覚書が県としてのきちんとした判断なのかどうかということは、今後金融機関との間で協議をしていかなければいけない課題でございますけれども、そうした流れ、過程そのものが県民の目から見ても、また私の目から見ても、極めて不透明で、また不適切なやり方であったことは言うまでもございませんが、この闘犬センターの件は、結局は融資そのものはなされておりませんので、県議会の方からも背任の未遂というような形で告発を受けているという事件でございます。
 以上がザッとした事実経過でございますが、どうして、それではこうしたことが起きたのかということを考えてみますと、1つは、同和団体など、特定の団体、また、この闘犬センターの経営者のような特定の個人、こうした方々、こうした団体との県政との癒着、しがらみというものをきちんと整理できていなかったということが1つの原因であり、きっかけではなかったかと思います。

 と言いましても、私は同和対策そのもの、人権対策としての同和対策を、勿論、否定するものではございませんし、また人権対策、差別をなくしていくための対策というものは、当然必要なことは十分認識をしております。が、これまでの同和団体の運動の歴史というものを振り返ってみますと、あの「水平社」以来の運動の歴史の中には、素晴らしい取り組みはいっぱいありました。例えば、今も子供達の教科書は無償でございますけれども、これも高知市の長浜で始まった教科書無償の運動が残している成果でございます。
 このように、当初は弱い立場の人のための運動として、数々の成果を残してきました。しかし、昭和40年代の半ばに同和対策の特別措置法というふうな形で特別の法律ができ、特にこの同和対策事業というものが様々のハードの事業、道を造るとか建物を建てるとか、そういう事業と予算と直接結びついたあたりから、かなり運動が変質をしてきた、変わってきたのではないかということを思います。つまり、弱い立場の方のための運動であったものが、予算、お金というものと絡み付くことによって、ある意味では強い立場の運動に変わってしまった。そういう面が否定できないのではないかと思います。
 実際に、私自身は、同和対策の本部として、本部長は副知事でございますので、自分が本部員として団体との交渉の場に出たことはございませんが、そういう場に出た職員の話を聞けば、罵詈雑言と言っていいような言葉が浴びせかけられる。そういう中で、強いプレッシャーを受けるようになった、という話をいたしますし、また、今回の一連の事件に関係をした職員との話の中でも、自分が若かった頃、こうした同和対策への問題点ということを指摘をした仲間の職員が、後で人事の面で大変不遇な目を受けた。処遇を受けた。そういうものを見て、同和対策事業というものは、特別に、やはり考慮していかなきゃいけない事業だということを強く感じた、というような話をしておりました。
 このようなことから、長い間、同和対策に対するプレッシャーというものを、県の職員が感じてきたのではないかと思っています。勿論、全ての原因、きっかけというものを同和対策にしようというわけではありません。けれども、今申し上げたような、歴史的な積み重ねというものが、同和対策事業へのゆがみというものを生み、そして、このモード・アバンセの事業も同和対策事業として取り組まれたということから、十分それを見極めていく目が曇ってしまったという面が1つは指摘できるのではないかと思っています。
 こうした反省から、先ほどちょっと申し上げました同和対策本部という、副知事を本部長として同和団体と密接に関係をしながら取り組みを進めていくという組織は、この3月をもって廃止をいたしましたし、また「同和対策課」という課も廃止をして、「人権課」の中で、本当の意味での差別撤廃の取り組みをしていく事業として、同和対策の事業も進めていくという形に変えていくようにいたしました。

 次の問題点として考えられることは、先ほどもちょっと触れましたように、県庁の中で、職員相互の意思の疎通が十分成されない。また、情報伝達がうまくできていなかったという点ではないかと思います。この点は、今回の問題をきっかけに作りました融資制度を検討する委員会からも指摘を受けておりますが、実際、このような県が行った融資で問題が起きたのは、今回が初めてではございません。過去にもそういうことがあって、その事件をきっかけに要綱という手続を決める文章は改められました。
 しかし、それを1つずつ仕事として積み重ねるときのマニュアルというか、書面などがきちんと改まっていなかったために、結局「あの時こう言ったはずだ」「いや、聞いていない」ということが繰り返されて、同じような間違いがまた起きてしまいました。こうしたことから、今回はその要綱ということだけではなくて、1つずつの手続をしていくときのマニュアルをきちんと定める、見直すということをするようにいたしました。
 少し細かい話になって恐縮ですが、例えば、融資の診断をしていくときに、企業の側から色んな要請がきます。それに対して、ここはこう改めなさいということ言ったときに、単に口でそういうだけではなくて、そういうことを何月何日にきちんと指示をした、ということを書き込む欄を作っていく。また、それに対する相手側の会社からのもう1度再提案を誰がいつまでに見ていくか、ということをまたきちんと書き込んでいく。そういうことで1つずつ手続が書類として残っていって、そしてそれが1つずつまた次に積み上がっていく。そのような形に改めることにいたしました。
 また、そもそも県の職員というのは、何年か経ちますとその職場を替わりますから、その融資、お金を貸すということで本当の意味の専門家にはなれません。ということから、今後は、審査をしていくような委員会などは、もう県の職員ではなくて全部外部の委員にお任せをしていくというような仕組みに改めていくことにいたしましたし、また、融資というのは、企業から申し出があってそれに対して指導をしていきますから、当然、指導に対して今度は企業の側はそれを改めて県が受け入れやすいような話を持って参ります。そうすると、それをまた断れなくなって次の段階に進む。ということで、なかなか後に戻れないという問題点があります。
 だから、そこで、今後は、途中でも何かおかしいと思ったら、もう、最初の手続から戻るというような形にきちんと要綱を改めるようにいたしました。併せまして、今まで申し上げたような、県が直接お金を貸すというような問題の起きる手法は、今後、基本的にはやめて、金融機関と一緒に貸付を行っていくような制度に全て改めていきたいと思っています。こうしたことで、今後融資をめぐる問題というのは起きないような、そういう形に改められるのではないかと思っています。

 もう1つ、今回のことで感じたことは、「公益性の判断」「裁量権の範囲」というものでございます。といっても、少し難しい言葉ですので何のことかなっと、こう思われるかもしれませんが、私達県が仕事をするときに、その仕事が県民の皆さん方のために役に立つかどうか、ということを当然判断をしていきます。そのときに、県民の皆さん方のために、これこれこういう理由でやらなきゃいけない事業だという判断、これがまさに「公益性の判断」でございますし、その判断は、これまでは県の、行政の側の裁量に任されている、という前提で仕事をして参りました。
 しかし、これからは全てが、この県の行政の裁量に任されていると言っていいのだろうかということを、今回の事件を通じて感じております。
 と言いますのも、今回の事件では、先ほども言いましたように、背任というような疑いで告発を受けております。が、従来背任事件というのは、個人的によからぬ思いを持って、何か私腹を肥やすとか、また、個人的なつながりで、もう分かっていながら無理矢理お金を貸すとか、そういうようなときに適用をされた罪でございました。が、今回の事件として取り上げられている問題は、少なくとも県の行政の仕事の中で一定の議論も積み重ねながら、その中で起きてきたことでございます。
 例えば、「公益性」ということで言えば、先ほども申し上げたような400人の雇用がいるというふうなこと。しかも、その前に「高度化事業」ということで一定国の審査も受け、国と県が一緒に融資をした。それをすぐに潰すわけにもいけないというような判断。これが正しかったかどうかは別にして、その時点で、そういう公益性の判断をして、次の県の単独の融資に移ったというものでございますので、その意味では、ただ単に個人的な私腹を肥やすとかいう犯罪とは、やや質が変わっております。しかし、今、もうこうしたものが単に公益性があった、裁量権の範囲だと言って許される時代ではなくなってきたというのが、今回の事件が私達に突きつけている問題ではないかと思います。

 ちょっと違う例で恐縮でございますけれども、「諫早湾」という、あの長崎県の干拓で、有明海の海苔が全く採れなくなったということが今問題になっております。これも干拓の事業をするときに、堰を造って干潟を無くして、そこに田畑を作っていくという事業をしてという話が出たときに、様々な反対論があり、大変大きな議論がございました。
 そうした中で農水省が、私達には少なくとも目に見えないところで、しかし、この事業はみんなのために、国のために必要だという公益性の判断をして、あの事業に取り掛かったわけでございます。けれども、今になって、有明海の海苔の問題も出て、また様々な問題が出て、調査をしよう、また一旦、干拓を止めようというようなことで、また膨大な予算を使うということになっています。これも、まさに今の時代、こういう公益性の判断が県民・国民の目に見えない所で次々行われて良いだろうかということを、私達に突きつけている1つの課題ではないかと思います。
 このようなことを考えますと、これから全ての事業ということはいきませんけれども、しかし一定の事業は、県が、国が、皆さんに見えない所で勝手に公益性を判断をしていくのではなくて、その公益性を認定するような民間の方々に入っていただく委員会のようなものが必要な時代になってきているのではないかということを感じます。
 例えば、千葉県に我孫子市という市がございますが、この我孫子市という所では補助金を全て公募制にして、そして市民5人の方の公益性認定の委員会というものを作って、その補助金が適正かどうか、公益性があるかどうか、ということを認定をしてもらって、それを交付をしていくという仕組みに変えたということを聞いております。いきなり全てがそうなるというわけではございませんけれども、こうした公益性の認定を県民・市民にお任せをしていく、また、そういうご意見を聞くような仕組みを作っていくということも、今後必要になってくるのではないかということを、この事件を通じて感じました。

 以上が、この事件についての反省点というか、問題点でございますが、更に、最大の反省点として言えることが1つございます。それは何かと言うと、情報がきちんと公開をされていなかった。県民の皆さん、また県議会の皆さんにこの情報がきちんと伝えられていなかったという点でございます。このことが、今回この融資がやみ融資と言われた最大の原因でございますし、この情報公開ということがきちんとできてさえいれば、この今回の問題は起きなかったのではないかということが悔やまれてなりません。これまで役所の側が情報ということで思い浮かぶ言葉は、情報を管理をするとか、また守秘義務、つまり守る義務があるといったような言葉でございました。が、しかし、これからは、勿論プライバシーのこととか、企業の秘密とか、残されたごく少数の守らなければいけない秘密はあっても、全ての情報は、やはり原則として公開だ、というふうに私達の頭を切り換えていかなきゃいけない時代になってきていると思います。このことが、今回の最大の反省点でございますし、また、この情報の公開、開示ということが十分やっていければ、こうした問題は、この融資の問題に限らず、二度と起きていかないのではないかなということを感じております。

 それでは、今申し上げたような様々なというか2つの事件の中で、私自身がどう関わり、また、そこに自分自身がどういう責任があるかというのが次の課題でございます。もう1つの事件でございました、まず闘犬センターの方の話からお話をいたしますと、この闘犬センターの経営者については、私は知事なったときから県との特別な癒着に極めて疑問を感じておりました。と申しますのは、私が知事になりました平成3年の暮れでございますが、その頃には、新しい年度を迎えますとこの企業の経営者の方が県庁に来られて、幹部の職員に訓辞をする。何の権限もない民間の一企業人にも関わらず訓辞をするというふうな、もう常識では考えられないようなことが平然と行われておりましたので、私はすぐ、そういうことは止めさせました。
 そのようなことから、この経営者との間には私はずっとある意味ではわだかまりというか、疑問を抱き続けておりました。けれども、このことはたぶん議会の方も、マスコミも含めて多くの方がその問題を知りながらも、なかなか手が出せなかったというか、口に出せなかった何かがあったのではないかと思っています。ですから、自分としては、この企業経営者との対立というのは、ある意味では孤軍奮闘の思いでございました。けれども、去年、ちょうどこの人が、県の体育協会の会長を目指そうということをおっしゃり、その際に、極めて不穏当な発言をされたました。これが私は、ある意味では、最後のチャンスではないかということを思って、自らそのことを問題ではないかと指摘をする記者会見を開き、それがきっかけになって様々な動きが出てきました。
 今回、議会の百条委員会の中で、この問題が改めて取り上げられるようになったのも、公然とこういう問題が取り上げることができるようになったのも、私は、そうした一連の流れの結果ではないかと思っています。そういういきさつがございましたから、そもそも私はこの融資に関わる話を聞いたときには、当然反対をいたしましたし、私以前に財政課そのものが絶対こういう融資はあってはならないという判断をしておりましたので、先ほども申し上げましたように、この融資は成されずに、未遂のままに終わっております。

 もう1つの、その「モード・アバンセ」の方でございますが、この「モード・アバンセ」への融資、お金を貸したということは、1つは高度化事業という、国と一緒にやった事業での融資がございますし、もう1つはその後の運転資金が無くなった、と言われて貸した県単独の融資、この2つがございます。
 最初の高度化事業の融資の件は、私自身、その高度化事業の進み方とか、その内容についての説明を受けておりませんでした。というのは、別に特別なことではなくて、通常高度化事業というのはいっぱいございます。それらについて知事が一々報告を受け、その内容がどうか、ということをチェックをしていくような仕組みにもなっておりませんし、ゆとりもございません。このことは、別に高知県だけに特異なことではなくて、47の都道府県どこでもそうであったと思います。
 その次の、今度は県の単独の融資の件でございますが、これもそういう申し出があり、また様々な議論が財政課から副知事の間でなされ、そうして結果として融資に至ったというようなことは、その時点では私は全く報告を受けておりませんでしたし、自分自身も決裁に関わっておりませんでした。が、勿論、私自身が、その副知事はじめ幹部職員の任命権者として、また様々な問題が起きた場合の管理監督の責任者として、その責任を逃れようというものではございません。けれども、事実関係としてはそういう流れにございました。
 ですから、私はこうした流れを皆様方にご説明をし、そしてその中で、私自身がそれではどう自分の身を処していけばいいかということを、是非、県民の皆さん方にもご意見を伺いたい。そういう思いで、この間の県議会では、自分の身の処し方は、県民の皆さんのご判断にまず委ねたい、ということを申し上げました。
 と申しますのも、自分が10年前に知事になりました頃を振り返ってみますと、皆さん方が私に期待をし、寄せられたものは何か、それは県政の改革であり、また県の流れを変えるということであったと思います。私は、そういう皆さん方の思いを受けて、精一杯県政の改革ということに取り組んで参りました。労働組合との間で色々あった、古い取り決めなどを改めていったということもその1つでございますし、また、県庁の意識改革ということを言い続け、それを単に言葉だけではなくて、実際に自分達の組織の自己点検で動いていけるような、新しい仕組みも制度化をして参りました。更に、国と県の役人の官官接待の廃止ですとか、また情報公開の徹底等々、これまで全国的にもかなり進んだ県政の改革をしたつもりですし、そのことは一定のご評価をいただいていると思っています。

 が、その中で、手をつけなければと思って手がつけられなかった課題もございました。それが、先ほども申し上げたような特定の団体や、特定の個人との関係の清算ということでした。そう言いますと、そうであれば、その問題に気づいてるのであれば、もっと早くそのしがらみを断ち切っておけば、こういう問題は起きなかっただろうにという、ご批判・ご指摘もあろうと思います。
 確かにその通りであったと思います。けれども、自分自身は、全く高知にゆかりもなく、高知に飛び込み、様々な事業をするお約束をし、それを一方でやり、また県民の代表として県を全国にアピールをするというような仕事をして参りました。そういうことをしながら、なお、今申し上げたような問題点、ある意味ではタブーと言われたようなことに手をつけていって、様々なまた軋轢を生んでいくということを、なかなか時間的にも心の面でもゆとりがなかったというのが現実でございます。ですから、その意味では、自分の力量の不足というか、限界であったということを正直に思います。また、それに対してけしからんということであれば、そのご批判は甘んじて受けなければいけないと思います。
 けれども、自分としては今申し上げたように、精一杯自分自身の皆様方にお約束をしたことは取り組んできたつもりでございますし、また、これからも皆様方にお約束をしたことを様々実現をしていかなければいけないという、未来に対する責任があると思っています。つまり、今私の置かれた状況は、先ほども申し上げました過去のというか、これまで起きた結果に対する責任をどう果たしていくかということと、皆様方に対する未来への責任をどう果たしていくかそのバランスの中で、正直思い悩んでおります。
 ですから、是非、皆さん方にそうした中で、どう私に対しての思いを持っていらっしゃるか、また、私自身がどう踏み出しをしていったら良いと思われるか、そんなことについて、もしご意見が伺えればというのが私の正直な思いでございます。

 今日は、「水源税」のことのみ、県政に関わる一般的なこととして申し上げ、後は「モード・アバンセ」「闘犬センター」に関わる県の融資の問題についてのご説明ということで時間を使わせていただきました。
 以上でご説明を終わらせていただきますが、この融資の問題だけに限らず、何か県政に関するご質問や、またご報告があれば、ご意見をいただきたいと思いますし、また、特にこの融資の問題について、どういうふうに感じられているか、また、どんなご意見があるか、是非、私としては1人でも多くの方にお声を聞かせていただければと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 ご静聴ありがとうございました。

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